見直され始めた緩速ろ過
日本の水道水のほとんどは、急速ろ過方式で浄化されていますが、緩速ろ過法はいわば、浄水処理の原点ともいえる浄化方法です。
緩速ろ過のメリット
緩速ろ過は砂を充てんしたろ過槽に汚れた水を流し込みます。こうすることで、表層と内部の砂表面に微生物が繁殖します。表層では、微生物が膜状になり、生物膜によるろ過が行われます。
緩速ろ過法は、塩素などの化学薬品を使わないでアンモニアや鉄、マンガン、合成洗剤、細菌度も除去できるだけでなく、カルキ臭さなどがないため、ろ過水が美味しいというメリットがあります。
塩素消毒によって発生するトリハロメタンの心配もなく、体にやさしい水の浄化方法として、見直され始めています。
緩速ろ過のデメリット
緩速ろ過は、生物の力を利用して汚濁水を浄化するので、急速ろ過が1日に処理する150~200mに比べ4~5mと処理能力に問題を抱えます。さらに、原水の処理に広い面積が必要なため狭い国土の日本では、安全な飲料水を確保する方法としては適した方法ではありませんでした。
また、この方法では水質が良好で、濁りも低く安定している場合には有効ですが、あまりに汚染がひどい場合は効果的とはいえません。
まだまだ、川の水がきれいだった頃。戦前の日本では、ほとんどが緩速ろ過方式でした。しかし高度成長期を迎え、公害問題が深刻になるにつれ、緩速ろ過では対処できなくなったため、急速ろ過になってしまいました。現在では全国の給水の約5%しか緩速ろ過を採用していません。
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